年内の授業は明日で終わり…ゴールが見てくると気が抜けるのか、体の芯に溜まった疲れが自己主張を始める (^_^;)
それはともかく、先日の出張時に読んだのが『鋼の錬金術師 21 (ガンガンコミックス)』と以下のシュメール神話の本。
シュメル神話の世界―粘土板に刻まれた最古のロマン (中公新書)
- 作者: 岡田明子,小林登志子
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2008/12
- メディア: 新書
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なんでまたシュメールなのかと言うと、文字はこうして生まれた - もろ式: 読書日記で紹介した『文字はこうして生まれた』*1をきっかけに、メソポタミアあたりの神話、特に文字の始原の神話みたいなものに興味を持ったためである。
このあたりの神話について私が参照したのは、『ドルアーガの塔』(このビデオゲームを名作扱いするのは今でも違和感がある)と矢島文夫先生の『ギルガメシュ叙事詩』*2ぐらいなので、『シュメル神話の世界』に載っている神話はほとんどが初めて知るものであった。たくさんの神話(「成人向け」もある (^_^;;)を紹介しようというのが本書の方針のようで、解説はシンプルであるが、サクサク読めてよい(数千年も前の話がサクサク読めてしまうのは、逆に問題かもしれないが)。
また、『文字はこうして生まれた』によれば、このあたりの文字の始まりの神話はこんな感じらしい:
- シュメール
- 知恵の主エンキ神が保持する文明の100の要素を、女神イエンナがウルクへ伝えた。
- 『バビロニアカ』
- 体は魚、頭と足と声は人間、という海の怪物オアンネスが、文字などをバビロニア人に伝えた。
- 『聖書』
- 神が指で記された律法の石板がモーセに手渡された
いずれも、文字は最初から神様が持っていてそれが人間に伝わった、という形になっている。したがって、厳密に言えば、「文字が作られたときの神話」ではなく「人間が文字を使い始めたときの神話」ということになる。これは、蒼頡が鳥の足跡を見て漢字(の先祖)を作った、という説話とは趣が異なる(もっともそこに仏教が入ってくると、蒼頡が漢字を発明したのではなく、それ以前から漢字にそっくりな表記体系があった、という話になってしまう (^_^;; これについてはいずれ紹介しよう)。
神話とは、今さら言うまでもなく、民族とか社会とかの世界観を雄弁に語るものなので、このような文字の神話を見ていくと、「文字とは人間にとってどういうものなのか」ということを考える上でのヒントになるかもしれない。文字がどのように作られたかわからない、そういうのが神話化されていない、というのは、人工物である言語を「自然言語」と言うのと同様のメンタリティ(このへんは柄谷行人『隠喩としての建築』*3のパクリ)が隠されているのではないかと思うのである。