人文科学とコンピュータ研究会@印刷博物館
先の金曜日、情報処理学会の第64回人文科学とコンピュータ研究会発表会に日帰りで行ってきた。だいたい毎回質問する(もしくは、しようとする)んだが、今回は二つの発表で、難癖大魔神?の展開になった。
まず一つ目。「無形民俗文化財「古典万歳」を題材とするデジタル・アーカイブのためのWeb活用の試み」という発表でもっとも気になったのが、この手のデジタルアーカイブが「人間のわざを次世代に正しく伝えていく上で非常に重要である」と主張する点(下線は師)。実はこの手の発表に際しては、今回に限らずいつも同じ質問をしている。「外部の研究者の記録が、研究対象を変化させることになりませんか?(保存にならないんじゃないですか?)」と。これは民俗学、人類学などで何度も問題になってきたことであり、しばしば研究者による「暴力」「搾取」なんて言葉が使われることである。今回の発表者は「正しく」とか言ってるぐらいなのでかなり無自覚だったらしく、案の定、しどろもどろしちゃい、見かねた?会場からの乱入(現代的変容なんでOKみたいな意見も)もあり、議論は盛り上がった。残念ながらタイムオーバーになったが、来月のシンポジウムのパネルディスカッションでこのネタをやりますのでよろしく、と宣伝できたのが個人的に良かったな (^_^;;
あともう一つは「漢字ユビキタスを支える文字情報集積体の開発」。まあ、国家プロジェクトだったりするので(いろんな意味で)文句は言いたくないんだが (^_^;; いくつか気になったのでつっこんでみた。まず、「ワープロがあっても漢字の学習をすべきだ」「ワープロがあっても漢字を書く必要がある」というアンケート結果から、漢字ユビキタス(異体字をかなり細かく使い分けることができる、いつでもどこでも漢字処理システム)の必要性について国民的合意が得られた、みたいなことを言ってるんだけど、それはちょっと飛躍し過ぎでしょう、と(アンケートの結果は手書きの重要性を言ってるんであって、場合によってはコンピュータを使うことへの反対ともとれる)。これは「師先生の解釈も可能です」みたいな意味不明な回答で押し切られた (^_^;; あともう一個、符号化文字集合モデルでは、そもそも漢字ユビキタスは無理でしょ、みたいな質問をしたんだが、それはタイムアップで無視された (^_^;; まあ、がんばってください。
そんなこんなで会は終わり、印刷博物館へ。時間の都合上、ゆっくり見られなかったが、かなりすてきな博物館です。文字(コード)マニアは是非。でも、印刷に関係ないじゃんって思うことも多かった。適当なテーマを決めて、単に古本を並べてるだけのもあったし。