文字はこうして生まれた - もろ式: 読書日記でとりあげた本が届いた。漢字の起源として、楔形文字の原型となった会計用のトークンのようなものを想定してもいいかも、と問題提起している(らしい)論文が載っている(かもしれない)本である。
The First Writing: Script Invention as History and Process
- 作者: Stephen D. Houston
- 出版社/メーカー: Cambridge University Press
- 発売日: 2008/03/24
- メディア: ペーパーバック
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目次はこんな感じ(和訳をつけてみた):
- Part I. Orientation and Theory 方向性と理論
- 1. Overture of The First Writing. 序論 Stephen D. Houston
- 2. The possibility and actuality of writing. 書記の可能性と実状 John S. Robertson
- 3. Writing systems: a case study in cultural evolution. 書記系: 文化の進化についてのケーススタディ Bruce G. Trigger
- Part II. Case Studies of Primary and Secondary Script Formation 文字の形成の最初期および第二期の事例
- 4. Babylonian beginnings: the origin of the cuneiform writing system in comparative perspective. バビロニアの始まり: 比較を通じてみる楔形文字の書記系の起源 Jerrold Cooper
- 5. The state of decipherment of proto-Elamite. 前エラム文字の解読の現状 Robert Englund
- 6. The earliest Egyptian writing: development, context, purpose. 最初期のエジプト文字: 展開、コンテクスト、目的 John Baines
- 7. Anyang writing and the origin of the Chinese writing system. 殷墟の文字と漢字の書記系の起源 Robert Bagley
- 8. Writing on shell and bone in Shang China. 商の甲骨文字 Françoise Bottéro
- 9. Reasons for runes. ルーン文字の論理 Henrik Williams
- 10. Writing in Early Mesoamerica. 初期メソアメリカの書記 Stephen D. Houston
- Part III. Epilogue エピローグ
- 11. Beyond writing. 書記を超えて Elizabeth Hill Boone
- 12. Final thoughts on writing. 書記についての最後の思索 Stephen D. Houston
件の論文はBagley氏の「殷墟の文字と漢字の書記系の起源」であるが、それ以外にもおもしろそうな論文がPart I, IIIあたりに見られる。まだちゃんと読んでないので内容については何とも言えないが、絵文字研究との関連で言えば、11の「書記を超えて」は特におもしろそうだ。この論文では、視覚的に意味を伝えるものの音声(言語)とは結びついていない(狭義の文字ではない)書記システム(semasiographic systems)をとりあげている。例えば楽譜やダンス譜、数学や化学などでの表記法、DNA、メキシコの絵文字、ダイアグラムなどなど。
最近忙しくて(この1週間の会議時間数は40時間ぐらいになるのだが、いかがなものか)読んでる暇がないのだが(涙)、少しずつでも読んでいきたいものだ。