オッス!少林寺

少林寺拳法マンガである。小林流拳法とか空拳道とかではない (^_^;; まんま少林寺拳法である。

オッス!少林寺 1 (少年サンデーコミックス)

オッス!少林寺 1 (少年サンデーコミックス)

このマンガにはこれまで、多くの問題が指摘されてきた。まずタイトルの「オッス」である。開祖は「オッス」に対して否定的であるだけでなく、「クラブ内に残る体育会的悪弊」(例えばシゴキとか、後輩イジメとか)に対しても否定的であった*1。しかしこのマンガでは、特に前半において、「オッス」をはじめとする「体育会的悪弊」満載である (^_^;; (もっとも、開祖が否定しているにもかかわらず、実態としてはこのような「悪弊」は多く残っていると思われるが)。

さらにヤバいのは、少林寺拳法においては他流試合を禁止している(戦って勝敗を決めるような大会自体を否定している)のに、少年マンガの宿命か、主人公が大会に出場し強敵を倒していく、というありがちなストーリーになってしまっている点であろう。開祖曰く、

もし武道と云うものが(中略)単に試合に勝つことを目的として修練され、強者をつくる目的でのみ修行されるならば、これほど有害で、無益なものは他にないであろう。

http://www.shorinji.com/houwa/1972/19720300a.html

このマンガに同情するとすれば、(これまたありがちだが)大会で強敵に勝ち抜くために、仲間たちが時に反発し合いながらも一致団結し、友情を育んでいき、人格的にも成長する、みたいな感じになっている点は、開祖の教えと重ならないところもない。しかしながら、勝ち抜く方法が「天性の格闘センス」だったり(これもありがち)、少林寺拳法以外の武道経験だったり、土壇場で一時的に発揮される精神力だったりするので、漸々修学による人格の陶冶とはあまり関係がなかったりする。

ということで、少林寺拳法マンガとしてはイマイチな内容だったりするのだが、見るべき部分もある。それは、少林寺拳法が異種格闘技を行ったら?というシミュレーションの部分、言い換えれば少林寺拳法の技術が他の格闘技・武道にどの程度有効か?というのを描いた部分である。このマンガでは、空手、ムエタイ、プロレス、ボクシング、マーシャルアーツ、アマレスなど、メジャーな格闘技(の一部)との対戦が描かれ、当然のことながら少林寺拳法が勝利しているわけであるが、その中でローキックやかかと落としの捌き方とか、タックル、グラウンドへの対処の仕方などが(不十分ながら)研究されているのである。

ちなみにヒロインは、「強くない男は嫌い」みたいなことを連呼するだけで、たまにヤクザに拉致されたりしたりするものの、存在感は希薄。私としては、男子だけど石川君に一票!ってとこかな (^_^;;

*1:[http://www.shorinji.com/houwa/1980/19800301.html:title=心外無法 | 開祖法話 | 学生のリーダーたれ!〜学業で得られぬものを学ベ]参照。