寂海王 その一

寂海王とは、板垣恵介『バキ』シリーズの大擂台賽編に出てくるキャラクターで、「剛柔一体純日本式拳技」な「空拳道」の達人である。モデルは我らが少林寺拳法の開祖、宗道臣。ちなみに板垣恵介氏は少林寺拳法二段であり、少林寺拳法自体は『グラップラー刃牙』の最大トーナメント編で登場している。少林寺拳法のへっぽこ拳士として、これは読まずにはいられない。以下、寂海王=開祖と決めつけてこのマンガを読んでいく。

なお、一部のネット住人には「ウホッ!」なキャラとして定着しているが*1、それもまた日本仏教と男色文化との深いつながりについて研究したいと思っている私としては興味深い。ただし、今回はその面には触れない (^_^;;

ということで『グラップラー刃牙』1〜42巻(外伝1巻)を経て『バキ』23巻*2に至り、ようやく寂海王が戦いの舞台に登場。

まずはvs 陳海王。いきなり仕掛ける寂海王…って先制攻撃したら少林寺拳法じゃないじゃん (^_^;; しかもローリング裏拳気味。先生、そんな技、ぼく習ってません (^_^;; さらに悪いことにカウンターでパンチ入れられてるし。しかも何発も。あ、でも、後ろ受け身の時、手で後頭部を守ってる。こういう小ネタは少林寺っぽいかも。

何発かもらった後でいきなり陳海王を勧誘!「わたしと日本へ渡らんか」「日本にいるわたしの弟子が2万4千人/共に育ててみんか」「強くなるだけではつまらんぞ」…この辺はすげー開祖っぽい! 開祖曰く、

もし武道と云うものが(中略)単に試合に勝つことを目的として修練され、強者をつくる目的でのみ修行されるならば、これほど有害で、無益なものは他にないであろう。

すばらしい。あわてて補足をしておけば、少林寺拳法も通常の格闘技的な意味での強さはもちろん追求する(ただし、技術体系的には相手を殺すようなダメージを与える技が少ないので、ルールによってはかなり弱いような気もする)。開祖という人は「日本では政治家が最強」とか平気で言う。範馬勇次郎はアメリカ大統領より強いけど。

話を寂海王に戻す。2万4千人って、140万人いる少林寺拳法と比べるとずいぶん少ないなぁ。あと、弟子たちの格好も合気道みたいである。寂海王はまんま少林寺拳法の格好だが。

「強くなるだけではつまらんぞ」と言いながら右手を差し出す。お、これは!と思っていると陳海王がその手を掴む、と同時に投げ一閃!おお、少林寺っぽい。っつーか、少林寺拳法の拳士だったら、あの誘いには絶対にのらない。甘いな、陳さん。ちなみに高岡英夫氏は『空手・合気道少林寺*3で開祖の投げ技を絶賛していたが、寂海王も投げ技がお得意のようである。その後は裏固めから肩関節脱臼。裏固めはグラップラー刃牙 (30) (少年チャンピオン・コミックス)でも、少林寺拳法の技として描かれている。作者のフェイバリット・ホールドなのかもしれない。

(続く)

*1:例えばhttp://www.h5.dion.ne.jp/~ikeruze/baki28.htm#197

*2:

バキ―NEW GRAPPLER BAKI (No.23) (少年チャンピオン・コミックス)

バキ―NEW GRAPPLER BAKI (No.23) (少年チャンピオン・コミックス)

*3:

空手・合気・少林寺―その徹底比較技術論

空手・合気・少林寺―その徹底比較技術論