老ヴォールの惑星

いいSF小説に出会った。

4本の中編小説が収録されているが、ある個人の「強い身体と強い精神」で大事件や困難を克服してしまうようなありがちなものではなく、社会性もしくは共同幻想みたいなものが生命や人間性を支えているというものが多く、変な言い方だが「腑に落ちる」(ただし、食べ物に関しては概して淡白すぎる気もする)。しかも、それなりにSFに期待してしまう胸ワクワク的な要素もあって、楽しんで読めてしまうところがすばらしい。

宗教に関心がある人には「漂う男」における主人公と宗教家との問答(およびその後の別の男との対話)が興味深いかもしれない。主人公の意見を真に受ける必要はないと思うが、何かを考えるヒントにはなるだろう。