汲古書院のカタログを見ていたら、おもしろそうな本が紹介されていた。今年の春に出版されたようだが、勉強不足で知らなかった。
# Amazonにはないみたい。
目次を、執筆者の一人である關尾史郎氏のブログ(藤田勝久・松原弘宣(編)『古代東アジアの情報伝達』 : 關尾史郎のブログ)から拝借(一部修正):
はしがき(松原弘宣)
第一部 古代中国の情報伝達
中国古代の社会と情報伝達(藤田勝久)
秦と漢初の文書伝達システム(陳偉/柿沼陽平・訳)
漢代西北辺境の文書伝達(藤田高夫)
高昌郡時代の上行文書とその行方(關尾史郎)
碑の誕生以前(角谷常子)
北魏墓誌の作製に関わる二人の人物像(東賢司)第二部 古代日本の情報伝達
日本古代の情報伝達と交通(松原弘宣)
日本古代木簡と「私信」の情報伝達ノート ―啓とその背景―(小林昌二)
平城宮・京跡出土の召喚木簡(市大樹)
日本古代の文書行政と音声言語(大平聡)
古代文書にみえる情報伝達(加藤友康)
日本古代の石文と地域社会 ―上野国の四つの石文から―(前沢和之)あとがき(藤田勝久)
内容については、この本のもとになったシンポジウムの記録(公開シンポジウム「古代東アジアの社会と情報伝達」 : 關尾史郎のブログ)からもわかる。カタログには、「【本書】より」と題して「はしがき」からの抜粋と思われるこんな文章がのっていた。
そもそも文字を記すということは、発信者(記録者)が時空を超えて意思・情報を発信・伝達する目的でおこなう行為であり、受信者はそれを理解(受容)した後に、それを保管なり廃棄することを不可避とする。……出土文字資料は、発信から廃棄に至る全ての経緯の痕跡を留めていることが最大の特徴で、文字の本来的機能を示していることが知られる。
発信者〜受信者という情報モデルはシャノン的な気がする。保管とか廃棄とかのライフサイクル(文字の「延命」や「死」)について、ここまで明確に打ち出している文字研究はなかったように思われ、興味深い。ぜひ手に取ってみたいが、花大の図書館にはないようだ。今度の収書で注文しよう。