CRITICA vol.2

探偵小説研究会の『CRITICA』第2号*1を、千野帽子さんよりご恵贈いただきました。ありがとうございます。

どこをとっても面白い内容なのだが、もっとも関心があるのはこのあたり:

ジャンルという制度は、商業モデルを支えるし、同時に好尚の基準をも作ります(ここで言う好尚とは嗜好と流行の両方の意味)。商業の制度が好尚にフィードバックして、好尚が拡大再生産されます。つまりまず制度ができ、そのあとに理念が遡って作られる。だから商業ジャンルというものは「気がついたらもうある」ものです。〈つねにすでに〉あるものなのです。二回目はニューアカっぽく言ってみたよ。(千野帽子「少年探偵団は二度死ぬ。―ジャンルを語ろうとして」, p. 97)

このような再帰的な構造というかシステムは、ミステリとかSFとかに限らず、例えば歴史学のような研究分野なんかにも適用できるし(もっとも、研究分野によっては縮小再生産なところも多いかも (^_^;;)、『テヅカ・イズ・デッド*2におけるキャラ/キャラクターの循環的な関係にも共通する(ただし、『テヅカ〜』ではこのあたりの理論的な詰めは甘いように思う。来月の台湾での発表*3で、この問題に少し触れる予定)。たいへん勉強になります。

*1:[http://www.geocities.co.jp/tanteishosetu_kenkyukai/critica.htm#02:title=目次]、参照:id:chinobox:20070820:1187589999

*2:[asin:4757141297:detail]

*3:[http://www.ipsj.or.jp/09sig/kaikoku/2007/CH76.html:title=第76回人文科学とコンピュータ研究発表会]