ペルシャの幻術師

これを読んでたら、頭がくらくらしてきて、一瞬、現実と虚構との区別がつかなくなった。

ペルシャの幻術師 (文春文庫)

ペルシャの幻術師 (文春文庫)

この短編集の中の「兜率天の巡礼」の主人公は、「ポツダム政令によって京都のH大学*1を教職不適格者として追放された法学博士」である。この主人公は、妻の死をきっかけに、妻の祖先である秦氏と、彼らが日本に伝えたとされるネストリウス派キリスト教の信徒の長い長い流浪を幻視する。そしてついに太秦広隆寺と大酒神社、木嶋坐天照御魂神社蚕ノ社)と巡り、最後に嵯峨野の上品蓮台院へと至る…。

実は今日、浜松と静岡で恒例の京都学講座で一席ぶってきたのであるが、今回のテーマは「太秦と秦氏」なのであった。しかも、本題ではないが(本題である摩多羅神のことについては、いずれここに書きたいと思う)、日ユ同祖論に基づく太秦=ユダヤ人説についてはいろいろ調べたし、講演中にも簡単に触れたのだった。

この本を買ったのは、「兜率天」という法相宗や観仏信仰に関係の深いタイトルに惹かれたからで、ネストリウス派キリスト教のことは想像もしていなかった。だから、まるで、よくあたる占い師に見透かされたような、そんな幻覚にとらわれたのである。

ふらふらしながら家に帰ったら、夜店が立っていた。その明かりを見たら、よけいに頭がくらくらしてきた。明日、京都市内の多くの神社で、神幸祭が行われるのだろう。

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*1:今になって冷静に考えてみると、小説の舞台である昭和22年には「花園大学」という大学は存在しない(その頃はまだ臨済学院専門学校)。だからH大学も花園大学がモデルではない(法学部とか医学部とかないしね)。