私がTwitterを使う理由

私がTwitterを使っている理由にはいくつかあるが、研究用とか仕事用とかで言うと、以下の二つになる。

ひとつは、自分の興味関心に重なる人をfollowすることで、耳学問ができること。共同研究室なんかでだらだらしていると、他の先生や学生、院生が議論しているのが耳に入ってきて、それが結構勉強になったりするが、それに近いかもしれない。『Twitter社会論 ~新たなリアルタイム・ウェブの潮流 (新書y)』でも述べられているように、Twitterのよさのひとつにfollowするのに承認がいらない(他人のつぶやきを勝手に見ることができる)という性質がある。コンピュータに関係のない学会や研究会、現在ではメーリングリストやSNS内のコミュニティ(古くはパソコン通信のフォーラム)などでは、「グループに入る」決心(というと大げさだが)やら手続きをある程度要求されるが、followはこの「グループに入る」感覚とは明らかに違い、非情に気軽に他人の議論に耳を傾けたりすることができる。これによって実際に、多くの情報を得ることができた。つぶやいてくださった方に感謝である。

もう一つは、研究者コミュニティの記述方法の一つとしてTwitterが使えないか、という関心である。研究者コミュニティの記述というのは、要するに歴史学なら歴史学、仏教学なら仏教学という研究をしている人(もっとせまくとっても広くとってもかまわないが)の集団が、どのようにつながり、どのように情報交換をしているのかを明示的に記述するということであり、言わば研究者コミュニティの“民俗誌”をコンピュータ上で表現したいということである。しかも、通常の民俗誌がそのコミュニティから離れたところで書かれるのに対して、コンピュータネットワークを使えば研究者自身を直接民俗誌の中に組み込むことができる。

実は、mixiが流行り出した頃、SNSを使って研究者コミュニティを記述するというのをやろうと思い、仲間を募って公募研究費の申請をしたことがある(残念ながら落ちちゃったけど)。そこで出たアイデアのひとつとして、単に研究者向けSNSを作るのではなく、研究対象になるような歴史上の人物(織田信長とか)をNon-Player Characterとして「ユーザ登録」させようというのがあった。NPCは通常のユーザ(つまり研究者)と同じように友達(mixiでいうマイミク)とすることができたり(信長は秀吉とマイミク、みたいに)、SNS内コミュニティに所属したりすることができる。これによって、ユーザが面白がってくれるのを狙うとともに、単なる研究者間のネットワークだけではない、研究者の志向や関心なども含めた記述が可能なのではないかと考えたのである。

このNPCについては、ある程度自動化(日記の内容をある程度事前に決めておいて、自動的に流す)するとともに、アルバイトを使ってその人物のふりをさせる、ということが考えられていた。現在、Twitter上には様々な有名人や歴史的人物を“騙る”ボットや、その人物になりすますユーザなどがいるが(たとえば http://twitter.com/MatsuoBashou など)、これは私たちが構想していたNPCみたいなことをTwitter上では自主的に(おもしろがって)勝手にやる人がいるということである。SNSになったときにこんなふうになるかどうかはわからないし、Twitter上のボットなどによるなりすましもごく一部の人物に限られるが、上にかいたアイデアがそれほどはずしているわけでもないという感触みたいなものをつかむことができた。

もっともTwitterの人間関係記述能力はかなり限られているので、そんなに期待しているわけでもないのだが、いろいろヒントをもらえそうな気がしているのである。