井筒俊彦の「深層意識的言語哲学」をめぐって

『サンガジャパン』Vol. 13に「井筒俊彦の「深層意識的言語哲学」をめぐって」という小文を寄稿しました。特集の中で思いっきり浮いている気がしますが、ご笑覧頂ければ幸いです。

サンガジャパン Vol.13(2013Spring)

サンガジャパン Vol.13(2013Spring)


内容としては、よく仏教などで言われる「言葉を超えた世界」みたいなものって、あまりちゃんと考えられてないよね、みたいな話です。分析対象としては、井筒俊彦先生の名著『意識と本質』を使っています。
意識と本質―精神的東洋を索めて (岩波文庫)

意識と本質―精神的東洋を索めて (岩波文庫)

この本で繰り返される、日常的経験世界を超えたところにある「深層」の「絶対無分節の存在」という概念は、よくよく読んでみると「無分節」ではなく、むしろ「文字」の世界だとされている。だったら「絶対無分節」とか言わなくてもいいじゃん!みたいなことを書いています。

井筒先生は「絶対無分節」の説明のために「言語アラヤ識」という独特の用語を用いるわけですが、私としては逆に「絶対無分節」という呪縛―言語を超えた真理というものを安易に前提としてしまう呪縛―から解放された井筒哲学のほうが唯識に接近するんじゃないかと思っています(これは以前、『春秋』での連載での主張に重なります)。

拙いものですが、ご批正頂ければ幸いです。