サブカル・スーパースター鬱伝

サブカル・スーパースター鬱伝

サブカル・スーパースター鬱伝

「サブカル系で活躍している人は40代で鬱になるのではないか」という仮説に基づくインタビュー集。実際に心身を壊してしまい、それを乗り越えた人々が赤裸々に病気の辛さを語る。

私は「サブカル」でも「スーパースター」でも「鬱」でもないが、やはり40歳になる年に心身が壊れてしまい(というと大げさだけども。ふりかえってみれば30代後半から徐々にその傾向があったが)病院に通ったりしたので、何とも身につまされる。

インタビューの中で吉田豪氏は、40代で心身を壊す原因の一つとして、体力が衰えていくのに運動していないことをあげる。再び自分をふりかえってみると、心身が壊れた時に救いになったのは少林寺拳法の練習であった。適度な運動、特に凝り固まった筋を伸ばすのが気持ちよかった(正確には痛気持ちよかった)し、殴ったり蹴ったりするのはストレス発散になったと思う。あと、結構重要だと思ったのは、少林寺拳法は誰かの手を握ることが多いので(握った側は反撃されるのだが (^_^;;)、スキンシップみたいなものによるリラックス効果みたいなのもあったのではないかと思う(スキンシップのことを学生に言ったら、「先生、心がやばいんじゃないですか」みたいなことを言われてしまった。まあ実際、そんな感じだったのだからしかたがない)。

このインタビューは、インタビュアーの吉田豪氏が40代に突入しようという時に、鬱になりそれを乗り越えた「先人」のオーラル・ヒストリーをまとめたものである。先人の伝記を使って人生の危機を乗り越える、という発想は、北條勝貴さんの「人物伝的歴史理解」(例えば下の本の「歴史叙述としての医書―漢籍佚書『産経』をめぐって」など)との関連でも興味深い。

“予言文学

“予言文学"の世界―過去と未来を繋ぐ言説 (アジア遊学)

ということで本書は、サブカルを入口に男子厄年(数え42歳)を人物伝で克服しようという本として、東アジア的に普遍的な価値があるんではないかと思うのである。大げさに言えば。