聖徳太子研究の最前線

以前、石井公成さんの聖徳太子研究に関する記事(聖徳太子論の見直し - もろ式: 読書日記)には大きな反響をいただきました*1。なんとこのたび、石井さん自身がブログをたちあげたようです。

むっちゃ勉強になります。大きく分けると、

  • 聖徳太子文献(をはじめとする関連文献)を分析する際に無視することができない「和習」の問題(中国のまっとうな知識人だったら書かない表現の検討)
  • 聖徳太子研究において無視されてきた…とまでは言わないけど、結構重要なことを言っているのにほとんど参照されてこなかった先行研究の掘り起こしと再評価

の2点が興味深いです。

前者については、石井さんを中心として私も開発に参加したNGSMという確率的言語モデルを用いた分析方法が大きな威力を発揮しています。個人的にはこれは大変有効な方法だと思うんですが(開発に参加するぐらいだし)、確率・統計的な分析方法自体に対して懐疑的な視点を持つ人もいるようで、このへんの溝をどうやって埋めるかがひとつのポイントかも知れません。

後者については、大山誠一さんらの議論が、がっつりした学術論文や学術書(博士論文みたいなやつ)としてではなく、一般書を中心として展開したのに原因があるのかも知れません。別に前者のほうが後者より偉いとか言うつもりはありません(問題意識を広く共有したり社会に還元したりすることは、研究活動の一環として極めて重要なので、一般書や公開講演みたいなものを蔑むつもりは毛頭ありません)が、緻密な議論を積み重ねるためにはある程度マニアックで一般読者を遠ざけてしまうようなことも書くことができる媒体での議論が必要なのではないか、と思ったりもします。

ともあれ、日本仏教史に関心がある人にはぜひチェックしてもらいたいブログですね。

*1:いくつかトラックバックもいただいています。[http://d.hatena.ne.jp/noharra/20080210/p4:title]とか[http://sicambre.at.webry.info/201002/article_27.html:title]とか。