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天才 勝新太郎

読んだ。圧倒された。

天才 勝新太郎 (文春新書)

天才 勝新太郎 (文春新書)

私は昔から『座頭市』シリーズが好きで、DVDを借りたり買ったりしながらたいがい見たのではないかと思う。ご多分にもれず、私の勝新に対するイメージは、一昔前のプロレスラーと同様、豪快でむちゃくちゃなキャラクターであった。しかし、本書を読んでイメージががらっと変わった。勝新は、映画が虚構と真実の二重写しであるのと同様、座頭市と自分との区別がつかず、勝新太郎というキャラクターと奥村利夫という人格とのあいだで苦しんでいた人だったのだ。本書のタイトルには「天才」とあるが、ここに描かれているのは所謂「天才」の姿ではない。常に新しい表現を求め、己を更新し続けることこそが映画だと思い込んだ、神々しいまでに破滅的なキャラクターだ。

脚本がないと言われている北野映画を見慣れている者からすると、脚本家の脚本を叩き台としてしか用いず、現場での感性で撮影を進めて行ったという勝新の方法が、なぜあのように破滅へと向かっていったのかは理解し難い面もある(映画が産業であったからこその苦悩だったのだろうか)。勝新の代わりに『戦場のメリークリスマス』に出場した北野武が、後に映画の道に進んで成功し、『座頭市』をリメイクした*1というのは、何かいろいろ因縁があるのかもしれない。

最後に名言をひとつ:

採算を考えるなら会社をやる意味がないんだよ!

*1:[asin:B0000A9D4A:detail]