読んだ。
- 作者: 武田雅哉
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 1994/08
- メディア: (B)
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「蒼頡」というから漢字の話だけだと思い込んでいたら、普遍言語の話とかも載っていた。おお。目次はこんな漢字、じゃなくて感じ:
- 序 眼球コンプレックス
- 一 蒼頡の夜明け
- 漢字発明者の伝説
- 蒼頡のイコノロジー
- 漢字の起源伝説
- 二 中国人のお荷物
- 漢字の発音表記
- 漢字のバベルと普遍中国語
- 三 月に映じた普遍の夢
- 十六、十七世紀ヨーロッパの中国語観
- 普遍言語構想と中国語
- 月世界語をマスターせよ
- 四 円環をめぐる対話
- 『西儒耳目資』の誕生
- レンズをのぞく二人
- 言語を生む円環
- 五 中国の言語ユートピアン
- トリゴーの子供たち
- 東洋の普遍言語計画
- 言語ユートピアの帝王学
- 六 蒼頡たちの画廊
- バベルへの挑戦
- 世のなかは変えねばならぬ
- 大清帝国新文字の画廊
- ユートピアの言語政策
- 七 蒼頡たちの午後
- 跳梁する記号たち
- 異文字のカタログ
- あるべき記号を求めて
そういえばヨーロッパで普遍言語が構想されていたとき、漢字は「真正な文字 real character」の一候補として参照されていたはずである。と思って『英仏普遍言語計画』*1をパラパラめくったら、
…東洋の普遍言語としての隠れもなき存在と名声によって、中国の漢字は、ヨーロッパの学者にとって実現可能な共通の文字という着想を、全面的に提供してくれたのだった。(p. 43)
なんてことが書いてあった。したがって、“普遍言語とその挫折”というモチーフを中国における漢字の歴史にあてはめてみるというのは、まったく正当なアイデアなのだろうと思う。
ただ、『英仏普遍言語計画』と比べてみると、いささかこの本は簡略すぎる。この手の分厚い本が書かれないのは日本の慣習なのかもしれないが(大学生向けの教科書なんかも、日本は最低限のことしか書かないのに対して、アメリカのとかはやたら分厚い)、テーマがテーマだけに端折ってしまっている、という印象を持ってしまう。
*1:[asin:487502214X:detail]