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情報歴史学入門

やっとAmazonで見えるようになった(が、これを書いてる時点ではまだ“Eメールでお知らせします”状態*1)。

情報歴史学入門

情報歴史学入門

とりあえずこんな目次:

  • 情報歴史学の目指すもの
  • この本の読み方
  • 第1部 データベースの読み方
    • 第1章 木簡データベースを読む
    • 第2章 正倉院文書データベース(SOMODA)を読む
    • 第3章 怪異・妖怪伝承データベースを読む
    • 第4章 文化庁「子ども文化教室」を読む
  • 第2部 デジタル化の技法
    • 第1章 目録類のデータベース
    • 第2章 文献史料
    • 第3章 モノ史料/建物/遺跡
    • 第4章 無形民俗文化財
    • 第5章 地理情報
  • 第3部 情報を引き出す
    • 第1章 はじめに
    • 第2章 検索
    • 第3章 数理的分析
    • 第4章 シミュレーション
  • 第4部 情報を発信する
    • 第1章 著作権とライセンス
    • 第2章 様々な公開方法
    • 第3章 利用状況調査とフィードバック
  • 第5部 卒業論文に向けて
    • 第1章 問題を立てる
    • 第2章 先行研究の集め方
    • 第3章 論文の書き方
    • 第4章 卒業制作の流れ
  • あとがき
  • 著者紹介
  • コラム
    • Wikipediaをどのようにつかうのか
    • どの言語から始めるか
    • 歴史学の方法
    • バックアップは念入りに
    • ブログでの論文のメモ
    • ウェブサイトやソフトウェアの引用方法

「この本の読み方」にも書いたが、本書は“日本史学を専攻しており、コンピュータを利用した研究をしたいと考えている大学生”を主な対象として書かれている(逆に、情報工学をやっているが、日本史に関連する研究をしたい、という学生のことはほとんど意識していない)。もっと限定的に言うと、筆者らが教鞭をとっている花園大学文学部の情報歴史学コース・ゼミでの利用を第一に考えて書かれた本である。しかしもちろん、日本史ではなく東洋史、西洋史を専攻している学生にも役に立つ部分はあると思うし、様々な大学、教育機関で教科書として使用していただけると思う。また、大学院以上の研究者や博物館、図書館で働いている方々にとっても(かなり基礎知識的なことが多いですが)有益な部分はあるのではないかと思う。

本書の構成は、大まかに言うと、

  • 人文系データベースやデジタルアーカイブのリテラシー(第1〜2部)
  • 知識発見(第3部)
  • 情報発信(第4〜5部)

みたいな感じである。

リテラシーというのは、既存のデータベース等を批判的に“読む”ための読み方と(第1部)と、データベース等を開発するために必要な技術=書き方(第2部)のことである。人文科学におけるコンピュータ利用についての本はいくつか存在するが、いずれも「書き」の部分に重点が置かれ、批判的な「読み」について章が割かれているものはあまりないのではないかと思う。もちろん本書でも充分ではないが、「読み」を重視している点はご理解いただければ思う。

また、「この本の読み方」で共著者の後藤真さんが

歴史学は、ランケの提唱した実証主義を受け継ぎ(とされ)、マルクス・ウェーバーの社会理論に基づき、非常に高度な実証と、社会分析に基づいて、その研究を進展させてきた。しかし、その副作用として、1980年代前後より起こってきた隣接諸学の研究傾向をうまく取り込めない現状が続いている。

また、世界的な情況からも取り残されてしまった。

さらに、用いる史料の多様化にもいまだ立ち遅れの感がある。

と獅子吼しているが(強調は師)、日本の人文学では古典作品や文化財などといった研究対象には関心が高いものの、それを読み解く方法の多様性には関心が低いのではないかと思う。大学教育においても“方法論”という授業はあまりない。第2部でデジタル化の様々な方法を紹介するためにそれなりのページを(各項目が薄味になることは承知しつつも)割いているのは、研究対象はひとつでもアプローチの仕方には様々な方法がある、ということを学生に知ってもらいたいという気持ちがあるためである(成功しているかどうかはともかく (^_^;;)。

第3部では、開発したデータベース等から知識を発見する方法について簡単に紹介している。本来ならばこの部分が情報歴史学の中心部分であるのだが、入門書という性格上(そして、データベース等の開発に偏重している研究状況を反映して)コンパクトになっている。

第4部、第5部は、それまでの章において述べられてきた方法を用いて得られた成果を、対外的に発表する方法について紹介している。第5部では「卒業論文」となっているが、他の分野と異なり論文の形式に一定の合意がとれていない(と思われる)この業界の現状に対する提案でもあるので、大学院生以上の研究者にも一読いただければ幸いである。

*1:しかも発売日が5月28日になってるよ。謎。