イエスという男

近くのブックオフで安かったので買った。病院の待合室で、テレビの音声(「ちちんぷいぷい」とか)に逆らいながら読んだ。

イエスという男

イエスという男

田川建三氏の態度は、宗教や我々の常識をはじめとする一般化、普遍化への志向によって見えなくなってしまっている、氏の言う「歴史」上のイエスを描こうとする。そして、そのような方法で描かれたイエスは、まさに普遍性を前提とした言説(ユダヤ教)に対して異を唱えた人として描かれている。「愛」の中身が問題なんじゃない、「愛」なんて超越的な一般者を認めてしまうと、表面的には違っても「愛」があるから皆平等、みたいな現実肯定につながってしまう(これは所謂“批判仏教”と同様の見通しだと思う)――それに逆らうために、イエスはあえてヒール的な言説で対抗しようとしたのだ!(強さという一般的価値を認めてしまったために凋落したプロレス業界にも当てはまるようだ。)

思想史研究者には耳の痛い箴言も多くて、足下を見つめ直すきっかけとなる。この本は、そういう本として読むべきじゃないかと思う。