ゲーム脳とフリーメーソン

2002年に出版された『ゲーム脳の恐怖』は、大きな話題になった。

ゲーム脳の恐怖 (生活人新書)

ゲーム脳の恐怖 (生活人新書)

この本はやらやら論座 2007/01 ゲーム脳のすすめと人類の進歩やらでボッコボコに叩きつぶされたはずだが、google:ゲームの悪影響なんか見ると、相変わらずこの手の言説は横行しているのがわかる。

ゲーム脳』と比べれば微々たる影響力しかないが、こんな楽しい本もある。

この本では、ノストラダムスの有名な大予言(「1999年7の月、 恐怖の大王が空から来たる…」)が、フリーメーソンの陰謀による人類洗脳計画だとしている。フリーメーソン系の携帯電話メーカーによる66機の人工衛星からマイクロウェーブが携帯電話を通じて脳に影響したり、フリーメーソンの息がかかったゲームメーカーS社(マイクロソフトと提携)による家庭用ゲームによって子供たちが洗脳され、30年後に恐怖の大王(モンゴルで生まれるらしい)の兵士として世界を戦争にたたき落とすらしい。

ちなみにそのゲームは1999年7月29日発売とのこと。当時はPlaystation全盛時代なので、プレイステーションのゲームタイトル一覧 (1999年後半) - Wikipediaを見てみると、この日にはこんなゲームが発売されている。

S社というとこのリストではソニー・コンピュータエンタテインメントしかない。つまり「洗脳プログラム」が埋め込まれたゲームって『みんなのGOLF2』? (^_^;;

それはともかく、両者は(どちらもインチキだということを除けば)趣きを殊にするが、以下の点で共通する。

  • 子どもの凶悪犯罪が増えているという認識
  • 唯一の原因を探す心性(陰謀史観的)
  • コンピュータに対する過剰な畏怖

どちらも、アメリカの学校での銃乱射事件とか、所謂“酒鬼薔薇事件”とかが起きた状況を受けて、「最近、未成年の凶悪犯罪が増えている」「子どもがキレやすくなった」みたいな認識を共有している(このような認識への反論はなどを参照)。そして、その原因を、複雑な社会の多様な要素を一切無視して、ゲームという唯一の原因に求めようとしている。

唯一の原因を求めるならば、ゲーム以外にも相関を見ることができるものはあるはずだ(平成に入って凶悪犯罪が増えているんだったら、平成仮面ライダーシリーズは完璧にアウト (^_^;;)。しかし、なぜか、標的になるのはゲームやネットなのである。これは、表象としてのコンピュータ (1) - もろ式: 読書日記で書いたような、我々のコンピュータ(的な知性)に対する強い憧れの裏返しなのかもしれない。