ニコニコ展示(案)補足

ニコニコ展示(案) - もろ式: 読書日記が意外に好評だったので、調子に乗って補足しておく。

最初考えていたのは、ニコニコ動画と同様に文字で書くものであった。実際には展示物に直接書くことはできないので、ケースみたいなものに書く。書く方法についても、最初はキーボードかな〜と思っていたが、モノをじっくり見たい人でわざわざ入力する人は少ない(私だったら面倒なのでしない)と思うし、この部分がおもしろい、みたいな注目点を矢印などで書き込めるほうがよいと思ったので、手書き形式を考えた。

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この場合、ケースの横4面を独立させたりすることで、「見る視点によるコメントの違い」を楽しむこともできる。「見る視点によるコメントの違い」は、前に提案した音声によるシステムでも、あったほうが面白いだろう(だとすると、Bluetoothではダメかな)。

ただこの方式では、平面的な絵画などはともかく、立体的なものだと、書き込んだ矢印が展示物のどの場所をさしているのかがわかりにくい(角度によって位置がずれる)。はてなブックマーク - 書架 - 2008年10月29日でコメントいただいたような「専用のHMDから除くと見える落書き」のようなインターフェースもおもしろいかもしれないが、この時点では考えていなかった。ARToolkitみたいなものを組み合わせれば、見る角度が変わっても追随してくれるようなものが作れるかもしれない。

で、なぜ最終的に音声形式にしたほうがいいと思ったかだが、博物館に来る人はモノをじっくり見たい人であり、モノを見るということを阻害することについては、かなりネガティブになるのではないかと思ったからである。ニコニコ動画の場合、同じものを何度も見られるし、コメントを消して見ることもできるので、じっくり見るのと書き込むのは両立可能だが、基本的に一回性の経験である博物館での「見る」行為は、自主的に博物館に足を運ぶ人々にとっては優先順位がきわめて高いのではないかと思う。私の経験(みんぱくなんかでPSPを使った展示を見たりした、ごく少ない経験)から考えても、視線が行ったり来たりする携帯端末は「見る」を阻害するので鬱陶しいし、ケース上の落書きやヘッドマウントディスプレイのような視界を制限するものも、見たい人には不評なのではないかと想像する。逆に音声であれば、展示物を見ながら音声ガイドを聞いたり、学芸員さんの解説を聞くというような経験を多くの人がしているので、違和感が少ないのではないかと思うのである*1

ヘッドセット方式とは別の方法として考えたのは、のぞき穴方式である。展示物への覗き穴にマイクとスピーカーが仕込んであって、あとは同じ(下図)。これはNOT FOUND | 大学共同利用機関法人 人間文化研究機構 国立民族学博物館の実験的な展示(について聞いた話――行きたかったなぁ)を参考にしている。

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ただこれだと、展示物を見ながらの会話(「あれって○×式に似てるよね」「いや、△□型だよ」や「これはいつの時代のものかな」「室町後期じゃない?だって…」みたいな軽い議論は博物館でよく見られる)が録音しにくいかもしれない。

また、ご意見がいただければ幸いです。

*1:もっとも、一回性の「見る」行為を重視する現在の博物館のあり方が最善なのかという問いはありだろう。バーチャルミュージアムのようなものは――あまり好きではないが――一回性ではない点でニコニコ動画に近い。