実録少林寺修行記

何これ、むちゃくちゃおもしろいんですけど (^_^;; 文体が個性的なので、慣れるまでちょっととまどうけど。

実録 少林寺修行記

実録 少林寺修行記

著者の自伝的な本であるが、「第一部・祖国愛に燃えて」とあるように、大学卒業ぐらいで話が終わっている。しかも大半が東洋大学体育会少林寺拳法部の部員や全日本学生少林寺拳法連盟の委員長として活躍していたころの話である。現在の少林寺拳法の雰囲気しか知らない(私を含めた)拳士には想像もつかないが、70年代の少林寺拳法周辺はきわめて物騒だったようで、大学同士で衝突したり、「戦闘空手を標榜する○○会」に放火覚悟で押しかけたり、左翼と右翼が衝突してロックアウトになった大学で秩序回復の行動を起こしたり、中国との友好を掲げているために街宣車に襲撃されたり、他武道からいろいろ攻撃されたりしていたらしい。そして著者が所属していた部や学生連盟は、武器を手に殺人も辞さない覚悟(「後は開祖がなんとかしてくださる」)で様々な「行動」していた(街宣車の迎撃態勢を整えたり、武道学会で公然と少林寺拳法を批判する研究者をぼこぼこにしたり…って、職業柄、素直に笑えないな、おい (^_^;;)。最近DVD化された千葉真一の『少林寺拳法*1って、ヤクザ映画っぽい演出かと思ってたけど、本書を読むとリアルだったんじゃないかと思えてくる。

こういう話は、花園大学少林寺拳法部の監督からも断片的に聞いていたが、こうやってまとまって読むとなかなか壮絶である。ちなみに、花園大学と言えば、130ページに馬場(現・佐々木)さんというOBの方の名前が出てきます。

それで、どのへんが「祖国愛に燃えて」かというと、中学時代にカッパブックスの「愛国心」の部分に感動して少林寺拳法に入門、「一人一殺」を志し、高校時代には三島由紀夫の自決に衝撃を受け、学生生活の終盤には維新を志し「鉄砲買うため」に土方仕事をしたりする、というようなあたりである。氏にとっては、このような活動こそが金剛禅運動だったのであり、学生連盟などでの活動もまさしくその流れの中にあったのである。

残念ながら、「第一部」ということで、このへんで本書は終わってしまうのだが、胴体力伊藤昇*2の名前が「その後大きく活かされる」人脈としてちらっと出てきたりして、第二部以降がぜひ読みたいところである(残念ながら刊行されていないようだが)。そもそも本書の出版は「難民救済活動の一環」として計画され、『神々の復活』*3の佐藤靖治氏の紹介で実現したとのことなので、第二部以降はさらにバラエティに富んだ活動をされていたのではないかと想像される。ああ、続きが読みたい。

*1:[asin:B000RG9LHA:detail]

*2:[asin:4838710844:detail][asin:4862201083:detail]

*3:[asin:4803500584:detail]