paraconsistent logicと東洋の「論理」

岩波講座哲学の新しいシリーズの第1巻所収の伊藤邦武「理性と非理性」を読んでいたら、paraconsistent logicのことが書いてあった。

岩波講座 哲学〈1〉いま“哲学する”ことへ

岩波講座 哲学〈1〉いま“哲学する”ことへ

paraconsistent logicとは、古典論理において一つでも矛盾を認めてしまうとそこからあらゆる命題が真になってしまうという所謂「瑣事性爆発」をブロックすることで、矛盾命題を容認することができるように体系化された論理システムのこと(wikipedia:矛盾許容論理参照)。

伊藤邦武氏は、paraconsistent logicについて(その可能性については慎重な評価ながら)紹介しつつ、

現時点でいえることはただ、少なくともこの論理がこれまで考えられてきた非古典論理のなかでも特にきわだって、伝統的な仏教思想や非西洋型の思考を標榜してきたわが国の独自の哲学との対話において、実り多い成果を生む可能性を示している、ということである。(p. 43)

と述べ、出口康夫氏の「真矛盾主義的一元論 ―後期西谷哲学の再編成―」上・下(『哲学研究』585・586号)を紹介している。出口康夫氏はhttp://www.bun.kyoto-u.ac.jp/phil/professors.htmlによると「数理哲学」がご専門とのことで、非常に読んでみたい。また、以下の本も「参考になり、利用しやすい」とのことなので、ぜひ入手したい。

Paraconsistent Logic: Essays on the Inconsistent (Analytica)

Paraconsistent Logic: Essays on the Inconsistent (Analytica)

paraconsistent logicについては、以前、龍谷大学の桂先生に因明(仏教の論理学)の形式化などについて相談していたときに紹介して頂いて以来、ちょこちょこ調べていた。Radium Software: Yesnoによると、いくつか計算機上で動く論理型言語の実装もあるようで、夏休み中にでもいじってみようかな、と思っている。ただ個人的には、因明、特に「勝義においては」や「自らが許すところの」などの限定句を含む命題の形式化についてはparaconsistent logicよりも様相論理のほうが近いと思っている。このへんについて現在、いろいろ考えているところだったりする。