id:moroshigeki:20080212:1202826410で紹介した『零式』*1の“ふり〓”について、〓(ゲタ)は何を表象するか: やまもも書斎記で、
もろさんの、種明かしに期待しているところです。
とまで言われてしまったので、以下ネタばれを含む「種明かし」:
『零式』は、作者も言っているように一種の「改変歴史もの」で、戦前の大日本帝国を思わせる皇義神國(すめらぎしんこく)*2が1945年に核兵器を落とされて戦争に負け、アメリカを思わせる帝国(LEV)の植民地として、国境をすべて壁で囲まれている、という設定。壁は放射能汚染を防ぐためと説明されているが、物語の最後で実はそこがカリフォルニア州に作られた実験国家だということが判明する。それとともに主人公の朔夜が神國語(≒日本語)だと思ってしゃべっていた言葉は実は帝国語(≒英語)だということも判明する*3。
〓がふられた言葉こそが本当の神國語で、先のスキャン画像でこの言葉をしゃべる忌三は皇義神國の特攻隊の生き残り。「相変わらず……ワケのわかんねえことをゴチャゴチャと……」という台詞があるが、要するに外国語なのでわからない、ということ*4。主人公が壁の外で出会った神國人もやはり神國語をしゃべるときは〓がふられるので(p. 380〜)、忌三の言葉を特徴づけるためのものではない(忌三の一行目の台詞には〓がないことからもわかる)。また、戦前の神國軍基地のシーンの神國人どうしの会話では、外国語ではないので〓はふられない。
當山さんが上のエントリで、
しかし、「〓」は、「記号」なのであろうか、それとも、「無い字」という「文字」なのであろうか……
ひょっとして、亡霊とか幽霊の言葉をあらわしているような気がします。
という感想を述べているのは、「亡国の言葉」という意味では当たってるところもあるような気がする。