少林寺拳法はスケールフリーネットワーク?

花園大学少林寺拳法部が発行している『花大拳報』2007年秋号に寄せた駄文を転載する。かなり強引な内容なのは、監督から「DVDの話に加えて、mixiとかに絡めて書いてくれ」と依頼されたため (^_^;;

「京都別院の成り立ちと開祖の思い出」を見て

合掌 昨年11月、大阪市中央体育館において、少林寺拳法創始60周年記念関西フェスティバル*1が開催されました。2007年の60周年のプレイベントとして開催されたもので、宗由貴総裁の基調講演をはじめ、関西2府4件の代表によるアトラクションなど、このような催しに初めて参加した私としては、たいへん興味深い内容でした。

中でも興味深かったのは、我が京都府連盟による「京都別院の成り立ちと開祖の思い出」と題されたプレゼンテーションでした。「日本少林寺拳法 京都別院 道場開き」と題された8ミリフィルム(?)に、その道場開きを伝えるラジオ放送が重ねられ、後藤伊山老師(達磨寺)や開祖の法話なども収録された、特別編集のVTRが公開されました。開祖の肉声を聞いたのは、実はこれが初めてだったので、それだけでもかなり感動的でした。また、その後、牧野先生がスライドをバックに京都別院時代の思い出を語って下さりました。

当日は会場が広く、聞き取りづらいところもあったので、是非このVTRを入手したいと思っていたところ、大森監督よりDVDを貸していただくことができました(配布用に再編集されたDVDには、上記のVTRに加えて、当日の牧野先生のお話や総裁の講演も収録されています)。私には、大学教員という職業柄か、一度興味を持ったことについてはついついマニアックに収集してしまう癖があり、その結果、開祖が書かれた書籍をはじめ、少林寺拳法を題材にした映画やマンガが我が家の書棚を徐々に圧迫し、パソコンのハードディスクにも少林寺拳法関連のビデオや資料(開祖の法話など)がどんどん蓄積しているという状況です。監督に貸していただいたこのDVDも、早速パソコンに取り込んでiPodなどで持ち歩き、折に触れて閲覧しているという今日この頃です。

ところで、このプレゼンテーションないしDVDを聞いていて(見ていて)強く感じるのは、開祖をめぐる人と人との出会いの不思議です。開祖が少林寺拳法を創始されて間もない頃に、その普及に協力した人々は、まだどのようなものかもわからない少林寺拳法や開祖に対して、わからないまま協力を申し出たそうです。また牧野先生の入門の際には、先生が開祖に入門を直談判したところ、初めて会ったばかりなのに入門を認めたそうです。もちろんその裏には様々な背景ややりとりがあったのでしょうが、それにしても極めて短期間に、道場の内外に人々のネットワークが広がっていった当時の様子は、開祖という大きな結び目があったからこそなのだろうと思います。

ちなみにこのように短期間で広大な人間関係が形成されるような現象は、ネットワーク理論という研究分野においてはスケール・フリー・ネットワークとよばれており、例えば開祖のような非常に強力な人間関係の結び目があれば、どんなに人間が増えたとしても人と人との距離が非常に近いネットワーク(俗に言う「世間は狭い」)が実現することが明らかになっています。このような現象をインターネット上で実現しようとしているのが現在流行しているSNSソーシャル・ネットワーキング・サービス)です。現在1000万人以上の会員を誇るSNSであるmixihttp://mixi.jp/)の中には、少林寺拳法のコミュニティがいくつもありますが、私自身もその中の「少林寺拳法mixi支部」「金剛禅総本山少林寺 mixi別院」「30代で少林寺拳法を始めた拳士」「ダメ拳士」などに参加して、日本全国の拳士の方たちとゆるやかな交流をしています(余談になりますが、「30代で少林寺拳法を始めた拳士」というコミュニティや、少林寺拳法ではありませんが「大人のための武道&格闘技」というコミュニティは、まさに30代で少林寺拳法を始めた私にとってとても励みになる場です。大学の拳法部で練習していると、私は毎年年齢を重ねていくのに、学生さんは常に20歳前後なのですから、体力的にはどんどんきつくなっていきます。上記のコミュニティでは、同じような境遇の拳士に出会うことができました)。

もちろんインターネットの世界に開祖はおられませんが、少林寺拳法という結び目がそれと同じ役割を果たしていることが、SNSの世界を見ているとわかります。実際、このようなネットワークを通じて合同練習会などの交流も行なわれているようです。インターネットが普及して人間関係は稀薄になったと言われる昨今ですが、開祖のような希有な方でなければ成し遂げられなかったことをテクノロジーがある程度代替している(かもしれない)のであれば、その現状に対してもう少し目を向けてもよいのではないか、と分を弁えず妄想する次第です。皆様のご叱正を頂ければ幸いです。 結手

開祖が「いる」SNSを作りたいんだけどなぁ。

*1:id:moroshigeki:20061105:1162965959