川本喜八郎『死者の書』

北條さんの「期待に違わぬ出来」という評価と、京都最終日という文句に踊らされて?京都みなみ会館*1へ。観終わった感想は…すいません、今イチのれませんでした。

のれない理由は、間断なく続く岸田今日子のナレーション。『まんが日本昔ばなし』でもそんなに説明しないだろってぐらい説明するものだから、作品の中に入り込めない。『湯屋の皇后』*2で中将姫の説話の形成を読んだあとだからかもしれないし、『日本災害史』*3の北條さんの論文で

祟りは、神祇官の亀卜や陰陽寮の式占を通じて発現し、その原因は、過去の適当な事象と結び合わせられることで遡及的に創造される。(p. 42)

というような一文を、そうだ、そうだ、と思いながら読んでいたからかもしれない。つまり、物語の事後性の印象がたまたま頭に強くあったので、ナレーションと言う形で同時進行で説明が入るこの映画の見せ方に違和感を持っちゃったのである。監督は結局、どの時点の視点で撮りたかったのだろうか。現代人?

でも、そのへんを割り引いても、特に古代史〜中世史な人や日本古典文学な人、仏教学な人は必見でしょうな。川本喜八郎の人形は相変わらず迫力があるし、CGかと思った平城京が手作りだったりでびっくりしたりと、ビジュアル的にはすごかったし。雨の中、郎女が当麻寺に行くシーンなんか、鬼気迫るものがあったなぁ。

*1:客層は普通でした (^_^;; cf. id:monodoi:20060309:p2

*2:

湯屋の皇后―中世の性と聖なるもの

湯屋の皇后―中世の性と聖なるもの

*3:

日本災害史

日本災害史