幼児に認知科学を教えてみよう

クイックジャパン (Vol.66)NHK教育テレビの特集をやっていたので、買って読んでみたら、ピタゴラスイッチの古屋光昭ディレクターのインタビューが載っていた。で、その中で、ピタゴラ〜の立ち上げ時のコンセプトについて、こんな風に語っていた。

じゃあ具体的にどんなことがやりたいのかバーッとノートに書き出してみたら、認知・認識のシステム、情報処理のされ方、数や抽象的な概念などで、具体的に言えば「音が印しになって、あることがわかる」「状況や立場が変わると、同じ存在でも呼び名が変わる」みたいなことを取り上げられないかと思っていたんですね。

正直びびった。これって、初等情報処理教育を(特に文系学生相手に)担当している教員が夢見ていることとかなり重なるんじゃないか? 少なくとも、私はこういうのがやりたい(こういうのだけがやりたいわけではないが)。

でも今日、大学の情報教育においてこんな「高尚」なコンセプトでカリキュラムを作るのはなかなか難しいんじゃないだろうか。だいたいが「就職のため」「社会に出て困らないスキルを身につけるため」「資格取得のため」みたいな感じで、もちろん資格やら何やらにある種の真理と哲学が含まれていることは知ってはいるが、やはりぐっと来る内容ではない。「社会に出て困らないスキル」なんてのを身につけさせるのは、それこそ義務教育でやるべきことなわけだが、大学は現在、義務教育や義務教育と化している高校での教育で積み残したことを教育するように要求されているので(迷惑な話だ)、一部の分野に関してはなかなか大学レベルの授業ができないまま4年間が終わってしまう。

教育テレビはかなり何でもありだが、こんな「思いつき」がそのまま番組にできるなんて、何て素敵な職場なのだろう。もちろん、高いレベルのエンターテインメント性、アート性で裏打ちされているからこそ可能なのであろうが(そしてその点については、大学はもっと考えなきゃいけないと思うわけだが)、正直うらやましい。私ももっとがんばらねば。