新書3冊

ここ数日、移動が多かったので新書を何冊か読むことができた。 ベストセラーの『下流社会 新たな階層集団の出現』を遅ればせながら読んだが、要するにマーケティングの本なのね。鋭い現状分析を含むし、大学関係者は必読だと思うが、いかんせんデータの羅列が多く(しかも、ちょっと恣意的過ぎる箇所もあるような)、雑誌記事的な文体なので、読んでいてあまり心地よくない (^_^;; 『99・9%は仮説 思いこみで判断しないための考え方』は、大学の新入生には読ませてもいいかな。「歴史はあくまでも仮説の集まりであり、真実ではないのです」(p. 156)みたいな単純化/教条化は教育効果がある面もあるが、スローガン的になってしまうのには注意ですな(仮定された有機交流電燈:〈分かりやすさ〉至上主義との戦いは続くにリンクを貼っておこう)。「近頃は、子供に短時間で大量の単純計算をさせるような教育法が流行っていますよね。そういうことに慣れてしまうと、たしかに脳の計算処理能力は上がるでしょうが、いちばん大事な「疑問に思う能力」は衰えてしまうと思うのです」(p. 199)という発言には疑問。疑う力を養うためには、読みやすくない本をたくさん読む能力が必要だし、そのためには「体力」がいる。それを養うための一番根っこのところを鍛えようとしているのだと思うのだけど、百マス計算の先生は。 『古代オリンピック』は、最近珍しい昔気質の新書のニオイ。いろいろ知らないことがあって勉強になったけど(パンクラティオンって全裸でやってたのね (^_^;;)、特に近代オリンピックのマラソン競技の成立についての部分はフィクションとしてのプロレス論を考える上でも示唆的だと思う。