第68回人文科学とコンピュータ研究会

10月28日に高岡市万葉歴史館で開催された第68回人文科学とコンピュータ研究会発表会に行ってきたので、遅ればせながらレポート: SA27005327日に準備のため幹事は前日入り。万葉歴史館の方であらかた準備していただいていたので、さっくり終わる(感謝!)。その後、歴史館のそばにあって、最近本堂の修理をしたという勝興寺で、『洛中洛外図』の特別展が開かれているということなので、連れて行ってもらう。立派な本堂、豪奢な内装(高岡は仏壇とかの生産が日本一だそうで、技術力がふんだんに投入されているらしい)、『洛中洛外図』に息をのむ。このお寺は蓮如上人が開いたということもあり、一向一揆の拠点の一つとして血で血を洗う?戦いの歴史もある。本堂では佐々成政ら有名な戦国大名の書状なども展示されており、生々しい暴力の応酬に思いをはせてみる。ちなみにこのお寺のあたりは大伴家持の旧跡があるかもしれないとのことだが、お寺があるために掘れない、みたいなことを教えてもらった。 さて、本番。必ずしもアクセスのよい会場ではないが、結構な人数が集まった。よかったよかった。 ○浮世絵師写楽と他の浮世絵師における浮世絵の目の印象に関する研究 前日の朝日新聞の夕刊に写楽の絵、目が違う 北斎・豊国・歌麿説を否定という記事が載り、注目度が高い。しかし、司会の鈴木先生がコメントしたように、研究者の恣意的な分析という印象も強い。美術史的な方法論をもっとふまえれば、少なくとも恣意性云々に関しては長年の批判に耐えたものが残っているはずなのだが、などと思ったりする。 ○色覚異常者にカラー印刷の辞書はどう見えるか HTML中級の授業でウェブ・アクセシビリティのことについて教えているので、個人的には非常にうれしい内容。色々勉強させていただく。 ○デジタルアーカイブの弁証法 私が昨年のじんもんこんで企画したパネルディスカッション「人文科学にとっての“デジタルアーカイブ”」や、5月にやった発表「「デジタルアーカイブ」とはどのような行為なのか」の問題意識を継承して下さったとのことで、自分のいいかげんな研究がやりっぱなしにならなかったことが大変うれしい。 内容的には、後藤さんが指摘していたと思うが、従来の問題との連続性を強調するのも大切だと思う反面、デジタル化であるからこそ起こる問題というのをもっと明確化すべきだったかと思う。これは私自身の課題にしたい。 ○口語アラビア語コーパスと検索システムの構築 これも知らない分野だが、イスラームにちょっと関心があったりするので、いろいろ勉強させていただく。 ○文化遺産に関するファセット型シソーラスによる複数のメタデータ統合の研究 手堅い研究だと思うが、質問でも言ったように、メタデータの統合=各業界間の合意形成という面が強いと思うので、技術的な問題よりもまずメタ業界研究が必要なのではないかと思う。 ○GPS携帯電話とコミュニティサイトによる写真アーカイブ情報の収集手法 これは上の発表とは逆に、コミュニティを作るという面では成功しそうな感じである。携帯電話はそういう求心力があるよなー。 ○人文科学のための地理情報共有システムの設計 GISを自前で作っちゃったのはすごいと思うが、情報共有というだけでは「人文科学のための」にならないのはどなたかがおっしゃったとおり。これもメタ人文学的議論が必要でしょうな。