東洋学へのコンピュータ利用

昨日、京大の東洋学へのコンピュータ利用第16回研究セミナーがあった。以下、感想など。

○「縁」モデルにもとづく拓本文字データベース 安岡孝一(京都大学)

どうも安岡さんたちがやろうとしていることと、うちでやろうとしてることは、素材は違えど方法としてはけっこう重なっていて、この発表のような文字(というか筆跡)データベースもうちでやってたりするので、ちょっとびっくりというか共感というか、そういう思いを持って聞かせていただいた(例えば白隠墨蹟の世界とかで、安岡さんの作ったものを改造して使わせていただいているし)。こういう研究者支援システムは最近どんどん増えており、現実的でいい傾向だと思うが、アプローチの仕方によって差別化がおきたりするのかな。

CHISEで複数の文字同定規準をサポートしてみる 守岡知彦(京都大学)

前にどこかで聞いたような気がする発表だったが (^_^;; まあ、それはプロジェクト内部の人間なのでしかたがない。私としては、質疑のところで議論したことだが、システム開発も非常に重要だと思う(だったらPerl/CHISEちゃんと作れよ>自分)一方、オントロジによって記述された知識体系(例えば漢和辞典など)を複数比較するために、表現を集合やグラフに変化させることができた方がうれしいので、今後は少しそういう方面も研究していきたいと思う。 Python 2.4には集合演算がビルトインだそうなので、Python/CHISEでもやってみようかな。Cとの連携がしやすいみたいだし。

○歴史史料のGIS分析の可能性—近世大坂大火に関して— 永田好克(大阪市立大学), 川畑光功(大阪市立大学), 柴山守(京都大学)

この手の研究は、もう少し歴史屋さんが参加した方がいいと思う。歴史学的観点がないからダメぽというわけではなくて、ちょっとブラッシュアップすれば歴史学で使える方法(特に史料批判において)になると思うからだ。残念ながら現在のところ、方法論的な位置づけが明確ではない。

リブリエできるかな—多漢字電子ブックの試み— 野村英登(交流協会)

意義のある研究(というか、人柱に近い (^_^;;)だと思うのだが、「10年早すぎた」系かも。本人のBlogも参照。 現状はどうなのか聞きそびれてしまったが、ある程度読むのが難しい本だと、読みながらコメントを書けたり線を引っ張ったりする機能がないと、辛いかもしれない。少なくとも自分は欲しい。そういう機能はあるのだろうか。

○CID-OpenTypeとFontForge 狩野宏樹(アトラス)

FontForgeについては興味があるもののなかなか手が出せずにいたので、この発表は非常に興味深く聞けた(が、司会をやっていたので、発表がのびるのは困った (^_^;;)。OpenTypeというか、Adobeの文字の収録基準については、これから問題になっていくのかも。 ところで狩野さん、OSC 2005では無事発表したみたいだけど、体調は大丈夫だろうか。かなり重装備の花粉症対策してたけど。

○要望から見た人名用漢字 笹原宏之(国立国語研究所)

悪く言えば「こんな要望がありました」というだけの発表なのだが、この膨大な用例を見ていると背筋が寒くなって来る。今の女子大生って、名前に「糞」って入っても、かわいいと思うのね (^_^;; すげー。ニュータイプだよ、おい。こーゆー用例集めもしてみようかな (^_^;;

○国際的な漢字符号の規格化における問題について 川幡太一(NTT)

IRGの裏話が聞けて楽しかった発表。前からけっこう聞いてた話ではあったけど。今後も何らかの形でこの手の活動の支援をしていきたいが、ある程度お金をゲットできないとなー。 5月にIRGの会合を京都でやるらしいので、何かイベントでもできないかな。

○GODDAG再考 師茂樹(花園大学)

私の発表は、オーヴァーラップする構造を表現するには紙テープの呪縛がある既存のマークアップではダメで、グラフとか順序集合とかでやるべきでしょという趣旨の話。発表しながら気づいたが、グラフといって離散数学の方を思い浮かべる人が果たしてあの会場に何人いたか、ちょっと不安になったので、失敗だったかもしれない。 発表の中で、GODDAGはシャレなんじゃないかということを言ったが、プレゼンを直接聞いたらしいWitternさんの話だと、割とマジらしい。だったらもっと発展させればいいと思うんだけど (^_^;; 会の後、安岡さん、笹原さん、川幡さん、守岡さん、ぱーどれ(以上発表者)に、わざわざ東京から来聴されてた小形さんを交えて、おいしいお酒を飲む。ディープな人たちばかりだ (^_^;;