最近、学生とのやり取りでメールを使うことが多いのだが、学生から来るメールはこういうのが多い。
From: hogehoge@docomo.ne.jp
To: s-moroNO@SPAMhanazono.ac.jp
Subject: (no title)
明日休みます。
お前誰やねん。この時点で無視しても全く問題ないと思ったりもするが、情報教育を担っているという職業意識から、こんな返信をする。
From: s-moroNO@SPAMhanazono.ac.jp
To: hogehoge@docomo.ne.jp
Subject: あなた誰?
花園大学の師茂樹です。
失礼ですが、あなたはどなたですか?「明日は休みます」という文面からして、花園大学の学生さんみたいですが。
それに対する学生からの返信。
From: hogehoge@docomo.ne.jp
To: s-moroNO@SPAMhanazono.ac.jp
Subject: (no title)
一回生の○山△夫です。情報基礎の授業です。
うーむ。とりあえず進歩したと見なして返信:
From: s-moroNO@SPAMhanazono.ac.jp
To: hogehoge@docomo.ne.jp
Subject: 明日の情報基礎、欠席の件
○山さん、師茂樹です。
情報基礎欠席の件、了解しました。
…
関係ないですが、メールにはタイトルをつけるようにしてください。
でないと、SPAMメール(迷惑メール)と見なされる可能性があります。
…
SPAMメールに見なされる以前にマナーなわけだが、話を短くしたいので(あまりよくないとは思いつつも)とりあえず功利主義的に答える。これに対する学生からの返信:
From: hogehoge@docomo.ne.jp
To: s-moroNO@SPAMhanazono.ac.jp
Subject: さっきはすいません
わかりました。
「さっき」っていつだよ (^_^;; 名乗れって言ったじゃんかよ (^_^;; 普通にメールを書いてくれたら1往復ですむ話が、2往復半しなければならず、しかも要件以外は根本的に解決していないところが虚しい限りでもある。
ケータイメールのトランシーバー的エクリチュール?が身体化し、時間・空間を隔てた相手に対する想像力が欠如してしまうと、このやりとりのどこがおかしいのかもわからない。最近1回生向けの授業で、メールのマナーみたいなのを一通り説明した上でこのやりとりを見せて「どこがおかしいと思うか」という問題を出しているが、答えられない学生が割と多い。
香山リカ氏の『スピリチュアルにハマる人、ハマらない人』*1にこんな一節があった。
横のつながりに無関心で、いちばんトップの人といきなり結びつこうとする、というこの傾向は、何もスピリチュアルな世界に限ったことではない。(中略)
実は私自身、大学で研究室にかかってくる外線電話に出ると、学生からの「来週は休講なんですか?」といった単純な問い合わせだった、という経験をここ数年、よくするようになった。
「休講じゃありませんよ」などと答えながら一応、「ふつうは、同級生にきくか、せめて学務課に問い合わせるかするんじゃない?」と付け加えたら、ある学生はこう答えた。
「だって、誰にきいていいかよくわからないから、直接きいたほうが早いと思って。実際問題、こうしてすぐにわかったわけだし。何か問題ありますか?」
返す言葉も失ってしまうが、彼らもまた、三〇〇人が受講する授業を受けていても、見えているのは「教授と自分」との間の関係性だけなのだろう。
香山氏は帝塚山学院大学の教授をしておいでだが、花園大学にいる私も前々から感じていたことである。最初は、行けばだいたいが解決する高校以前の「職員室」のイメージが強いのかと思っていたが、そのうち、まさに「教授と自分」としてしか関係性を把握できない学生がいることに気づくようになった。「職員室」と「教授と自分」は、あまり違わないのかもしれないが。
就職課の職員さんと話をしたら、こういうメールが来るらしい。
From: hogehoge@docomo.ne.jp
To: shushokuNO@SPAMhanazono.ac.jp
Subject: (no title)
アドレス変わりました。
このメールには、差出人が以前どのようなアドレスを使っていたかを知るための手がかりがまったくない。にも関わらず差出人は、自分のことであると相手にはわかると確信している(そうじゃなきゃ、こんなメールは出せない)。教職員を、ある種の全能者と見なすと同時に、保護者として接するこの態度は、うちのちびたちが私に対するときのそれであり、また何かあるたびに「国が悪い」「学校が悪い」「政治が悪い」と言ってはばからない、内田樹氏がよく言う他罰的なメンタリティに似ていないだろうか。
とりあえずそういうのを個別撃破できないかと思いながら、日々返信をしているのである。
*1: