大学で学ぼう 知のスキルアップ15

だいぶ前に出版されたものですが、ようやくAmazonで安定して買えるようになってきたので、こちらでも宣伝します。漢字文献情報処理研究会で作りました。

初年次教育の教科書です。けっこうがんばって作りました。従来の初年次教育の教科書と比較して、ICTの利用に関する説明が多くなっています。SNSでは気をつけろよ、みたいなことも書いてあり、読んでいただいた方から良い評価も頂いております。

この教科書を作るにあたってのコンセプト、特になんで漢字文献情報処理研究会で初年次教育の教科書などを作ったのかについては、漢字文献情報処理研究会2013年度 サマー・カンファレンス 大学教養課程とICT教育初年次教育学会 第6回大会などで発表させていただきました。前者については近々出る予定の『漢字文献情報処理研究』第14号で文章化しておりますので、ご笑覧頂ければ幸いです。

ActiveMailでの添付メールの送り方

大学のActiveMailで添付ファイルが送れない、という質問がいくつかあったので、簡単に説明しておこう。

  1. ActiveMailにログインする。
  2. 上の[メール作成]をクリックして、メールを新規作成する。
  3. メール本文などを書いたら、右下の[添付ファイル]の[追加]ボタンをクリックする。
    f:id:moroshigeki:20130711002412p:plain
  4. [ファイルを選択]ボタンを押して、添付したいファイル(レポート文書など)を選択する。その後[アップロード]を押してアップロードする。
    f:id:moroshigeki:20130711002831p:plain
  5. メールが完成したら、左下の[送信]をクリックして送信する。

授業でも言った通り、メールには相手の名前、自分の名前、文末の書名などを忘れないようにしよう。

サブカル・スーパースター鬱伝

サブカル・スーパースター鬱伝

サブカル・スーパースター鬱伝

「サブカル系で活躍している人は40代で鬱になるのではないか」という仮説に基づくインタビュー集。実際に心身を壊してしまい、それを乗り越えた人々が赤裸々に病気の辛さを語る。

私は「サブカル」でも「スーパースター」でも「鬱」でもないが、やはり40歳になる年に心身が壊れてしまい(というと大げさだけども。ふりかえってみれば30代後半から徐々にその傾向があったが)病院に通ったりしたので、何とも身につまされる。

インタビューの中で吉田豪氏は、40代で心身を壊す原因の一つとして、体力が衰えていくのに運動していないことをあげる。再び自分をふりかえってみると、心身が壊れた時に救いになったのは少林寺拳法の練習であった。適度な運動、特に凝り固まった筋を伸ばすのが気持ちよかった(正確には痛気持ちよかった)し、殴ったり蹴ったりするのはストレス発散になったと思う。あと、結構重要だと思ったのは、少林寺拳法は誰かの手を握ることが多いので(握った側は反撃されるのだが (^_^;;)、スキンシップみたいなものによるリラックス効果みたいなのもあったのではないかと思う(スキンシップのことを学生に言ったら、「先生、心がやばいんじゃないですか」みたいなことを言われてしまった。まあ実際、そんな感じだったのだからしかたがない)。

このインタビューは、インタビュアーの吉田豪氏が40代に突入しようという時に、鬱になりそれを乗り越えた「先人」のオーラル・ヒストリーをまとめたものである。先人の伝記を使って人生の危機を乗り越える、という発想は、北條勝貴さんの「人物伝的歴史理解」(例えば下の本の「歴史叙述としての医書―漢籍佚書『産経』をめぐって」など)との関連でも興味深い。

“予言文学

“予言文学"の世界―過去と未来を繋ぐ言説 (アジア遊学)

ということで本書は、サブカルを入口に男子厄年(数え42歳)を人物伝で克服しようという本として、東アジア的に普遍的な価値があるんではないかと思うのである。大げさに言えば。

井筒俊彦の「深層意識的言語哲学」をめぐって

『サンガジャパン』Vol. 13に「井筒俊彦の「深層意識的言語哲学」をめぐって」という小文を寄稿しました。特集の中で思いっきり浮いている気がしますが、ご笑覧頂ければ幸いです。

サンガジャパン Vol.13(2013Spring)

サンガジャパン Vol.13(2013Spring)


内容としては、よく仏教などで言われる「言葉を超えた世界」みたいなものって、あまりちゃんと考えられてないよね、みたいな話です。分析対象としては、井筒俊彦先生の名著『意識と本質』を使っています。
意識と本質―精神的東洋を索めて (岩波文庫)

意識と本質―精神的東洋を索めて (岩波文庫)

この本で繰り返される、日常的経験世界を超えたところにある「深層」の「絶対無分節の存在」という概念は、よくよく読んでみると「無分節」ではなく、むしろ「文字」の世界だとされている。だったら「絶対無分節」とか言わなくてもいいじゃん!みたいなことを書いています。

井筒先生は「絶対無分節」の説明のために「言語アラヤ識」という独特の用語を用いるわけですが、私としては逆に「絶対無分節」という呪縛―言語を超えた真理というものを安易に前提としてしまう呪縛―から解放された井筒哲学のほうが唯識に接近するんじゃないかと思っています(これは以前、『春秋』での連載での主張に重なります)。

拙いものですが、ご批正頂ければ幸いです。

キャンパスライフ 入学から卒業へ

分担執筆をした大学生向け教科書が出版されました。編者は花園大学の丸山顕徳先生です。手にとって頂ければ幸いです。

キャンパスライフ: 入学から卒業へ

キャンパスライフ: 入学から卒業へ

増刷御礼、あるいは「大きな物語」の復活?

執筆者として参加した以下の2冊が増刷になったとのこと。たいへんありがたいことです。

日本史の脱領域―多様性へのアプローチ (叢書・「知」の森)

日本史の脱領域―多様性へのアプローチ (叢書・「知」の森)


電脳中国学入門

電脳中国学入門

2003年出版の『日本史の脱領域』は6刷!、2012年出版の『電脳中国学入門』は3刷になります。いずれも教科書採用をしてくださっている方がいるとのこと。感謝申し上げます。

ちなみに『日本史の脱領域』には「データベースがもたらすもの」って題の一節を書いたんですが、日本史の資料のデータベース化が進んでますよーというのを枕にして、昨今の用語で言うところのビッグデータとそのデータマイニングの話をしています。そして、ルイジ・ルカ キャヴァリ=スフォルツア『文化インフォマティックス―遺伝子・人種・言語』における、

この本は人類の進化に関する研究を展望する。異なる多くの分野が、われわれの知見に貢献した。その知見とは、考古学、遺伝学、言語学にもとづく過去何十万年かの人類の歴史である。いまこの三分野は、幸いにして、新しいデータと新しい洞察とをつぎつぎに生み出しつつある。その成果はひとつの共通な物語へと収斂すると期待される。つまり、それらの背後にはただひとつの歴史が存在するに違いないのである。各分野にはまだ欠けるところがあるが、その穴はそれらの諸学の総合によって埋められると思われる。またそれら以外の諸科学、文化人類学、人口学、経済学、生態学、社会学などもこの研究に加わって、解釈をすすめるための柱となりつつある。(下線引用者)

という一文を引きながら、データマイニングの技術が進めば、やがて「「大きな物語」の復活」につながるんじゃね?みたいな話もしています。おお。

文化インフォマティックス―遺伝子・人種・言語

文化インフォマティックス―遺伝子・人種・言語

なんか『閉じこもるインターネット グーグル・パーソナライズ・民主主義』で言われる、急速なアルゴリズムの発達により、ユーザが見たい情報だけが選択されてユーザに見せられる所謂「フィルターバブル」的なことを、先取りして議論しようとしているようにも見えます。この文章を書いたときには夢の様な話だった企業によるユーザの行動履歴の収集が、今は当たり前ですもんね(その道具立ては、RFIDタグとかユビキタス・コンピューティングとかではありませんが)。

閉じこもるインターネット――グーグル・パーソナライズ・民主主義

閉じこもるインターネット――グーグル・パーソナライズ・民主主義

もっとも、私の書いたものに、多少なりとも先見の明みたいなものを感じられるとすれば、それは私が依拠した他の論考のおかげです。そもそも「先見の明」なんて、未来人の後知恵にすぎないのかもしれませんが。

最近読んだ本

春休み、という名称からは程遠い忙しい毎日ではあるが(そもそも大学教員にとって、長期休暇期間は繁忙期なのである)、それでも充電をしておかなければと思い、積読本を少しずつ消化している。最近読んだ仕事に直接関係がない本は、以下のとおり:

社会を変えるには (講談社現代新書)

社会を変えるには (講談社現代新書)

本書を昨今の反原発デモの盛り上がりを背景に書かれた本だと見れば、昨年の印仏学会で「震災と仏教」なるパネルを司会した者にとっては「仕事の本」の一つになるのかもしれない。

小熊英二氏らしい分厚い新書であるが、さくっと読める(ので、単純すぎないか?本当にそうかな?と思う箇所はけっこうある)。私は、学生時代からちょこちょことデモに参加していて、反原発デモにも何回か参加したことがあるのだが、そういう自分の活動(といえるほどのものではないが)の歴史的・思想史的な位置づけを大ざっぱに確認できたのは収穫であった。

たまには小説も、ということでハードSF。

ウロボロスの波動 (ハヤカワ文庫 JA)

ウロボロスの波動 (ハヤカワ文庫 JA)

人工降着円盤をはじめとするハードSFな設定に注目が集まるところだろうが、『なめらかな社会とその敵』をパラパラ流し読みしていたからか、個人的にはむしろAADDという組織(というか社会)のあり方に興味を持った。

ということで、全然積読本は消化できていない。